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原田ひ香『古本食堂』~古典好きじゃなくても楽しめる古書の世界~


こんにちは、anneです🌞

本日も本紹介ブログを訪れてくださり ありがとうございます☺!

突然ですが、古書店に行かれたことはありますか?

わたしは新刊の本も、新刊を扱う書店も好きですが、古書や古書店も同じくらい好きです☺️

活気ある新刊の書店とは少し違って、店内は少し薄暗くて、少し埃っぽい匂いがして。

街の中にひっそりと佇んでいるような、個人でされてる小さな古書店に旅先で出会うと、すごく心躍ります🤭

↑↑↑これは、今までに古書になってから我が家に来た子たちの一部です😊

新刊で買った本に比べ、匂いも色も手触りも、すべてに時間の経過を感じる本たち。

新刊と違って、どんな品揃えか入店するまで分からないのも、古書店の魅力。新刊書店よりも、古書店でいい出会いがあると、その本との特別な縁を感じてみたり・・・🤭(突然運命論者・・・)


今回は、そんな魅力的な古書店が一斉に集う街・・・







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目次


00|はじめに

この本を書店で見つけた瞬間、購入をきめました。

「原田ひ香」「本」「食べもの」好きなキーワードが揃いに揃っていたからです☺

わたしは一昨年に初めて 原田ひ香 という作家に出会いました。

原田ひ香さんというと、去年ドラマ化もされ、今も書店でプッシュされ続けてる『三千円の使い方』を真っ先に思いつかれる方が多いかもしれません😌

でも、わたしが初めて読んだのは『ランチ酒』シリーズ3作でした。とにかく、美味しいものを美味しそうに食べる描写がピカイチな作家さん!しばらくはまりこみ、『ランチ酒』以来、『まずはこれ食べて』『三人屋』など何作品も続けて読みました📚

原田さんの食べ物系小説はどれを読んでも、味や触感や噛んだ音が想像できるほどにリアルに感じられるのが最高なんだけど、そんな小説を何作も読みたくなる最大の魅力は原田さんが描く主人公の人柄にあるんだと気がつきました。

原田さんの描く作品の女性は、何かにとんでもなくすぐれていたり、突き抜けたキャラをもってるわけではなく、とても普通な人。そんな普通の女性が、何かに思い悩みながらも、生きるため食べるために働く。

わたしは、原田さんが描くそんな女性たちの【普通さ】がとてもすき😌

悩んで働き、働いて悩み、でも食べる。本作は、さらにプラス「本」というキーワードが足された!

迷わず購入しました✨



01|『古本食堂』について


作者は原田ひ香。読書情報誌『ランティエ』で2021年5月から10月にかけて連載されていた「絶版食堂」を改題、加筆、修正したもの。角川春樹事務所より単行本が2022年3月15日、文庫版が2023年9月15日に初版刊行された。




02|主な登場人物

鷹島珊瑚(タカシマサンゴ)・・・東京都、神田神保町で「鷹島古書店」を営んでいた慈郎の妹。慈郎の急逝により「鷹島古書店」を継ぐため帯広から単身上京する。

鷹島美希喜(ミキキ)・・・珊瑚や次郎の兄である統一郎の孫。東京在住。国文科の大学院生。不慣れな珊瑚を手伝うため「鷹島古書店」を毎日訪れる。

鷹島慈郎・・・「鷹島古書店」の元店主。慈郎の死後、鷹島古書店のある3階建てビルが慈郎の持ちビルで、慈郎はなかなかの資産家だったことが発覚。同ビルの2・3階は辻堂出版に貸している。

辻堂誠・・・慈郎の持ちビルの2・3階を借りて「辻堂出版」を営んでいる。世話好きで本好き。慣れない珊瑚をいつも気にかけている。

花村建文(タケフミ)・・・辻堂出版の若手社員。美希喜に想いを寄せる。




03|あらすじと作品紹介

神保町というと、高価な古典作品や純文学の希少本などを扱う店も多いので、そういう古書が中心かというと・・・・そういうものは一切なし!🤭

この作品の軸は「素人なのに突然古書屋を継ぐことになった珊瑚」「中古文学を専攻する院生の美希喜」というふたりの女性。

この珊瑚と美希喜が古書の世界をたっぷり楽しませてくれます☺

~珊瑚のおすすめ本はいつもマニアック~

「鷹島古書店」の店主になった珊瑚は古書屋としては素人だけど、根っからの読書好き!

店を訪れる悩めるお客たちに自分の読書経験などから店内の本から、ぴったりの一冊を紹介します。

古書店主の選書サービスを受けられるなんて、こんなに羨ましいことないと思う🥹

さらに、珊瑚が紹介する古書たちがすべて実在する書籍というのが魅力的!👏👏👏

例えば・・・

鷹島古書店のビルの2・3階に入っている辻堂出版の若手社員、花村建文は出版社で働いているが、読書はしても一冊も購入・保有はしないらしい。その他にも、現代の若者然りどこかつかみどころがないところなど、何かにつけてその若手社員は世話焼き辻堂社長の心配の種。


そこで、辻堂社長から珊瑚に、何か花村があっというような本を勧めてあげて欲しいという依頼が入る。


花村から話を聞いた珊瑚が勧めたのは『極限の民族』1という一冊でした。

「本多勝一さんの『極限の民族』っていう本よ。もう品切れだと思うんだけどね。カナダ・エスキモー、ニューギニア高地人、アラビア遊牧民の家族に入り込んで、一緒に住み、同じものを食べて過ごした記録。まずは最初のカナダ・エスキモーのところだけでも読んでみて」

日本人が文化の全く異なる異国の異民族と衣食住をともにした記録・・・これだけで十分興味をそそられ読んでみたくなるような本。さらに「それは、捕ったばかりのカリブーの生の腸を吸い込みながら食べている写真よ。(後略)」という言葉もあり、写真も充実していそう。こういうようなシーン、フィクション小説だからこういう本もフィクションだというのは珍しくない。なので、このように紹介されてる本が本当に実在してるというのはうれしい!☺

『古本食堂』では、こうやって訪れたお客にぴったりの一冊を珊瑚が紹介します。そのどれもが、小難しい作品ではなく、『極限の民族』のような大衆向け作品なのが、これまた『古本食堂』の魅力の一つ。古書店の物語だからと古典文学や純文学がたくさん出てくるよりも、古書店へのハードルが下がって、とっつきやすいのではないでしょうか☺

一方で・・・・

美希喜の古典や純文学のちょっとした小話も面白い!

偏食の子供のことをこのところ、ずっと考えている。

始まりは、私が学部生時代に書いた論文・・・・・・いや、そこまで行かない。「近現代文学」の授業中に「偏食の子供は、戦前の文学作品の中にはほとんど出てこない。子供が好き嫌いをいうことはほとんどあり得なかったのではないか」という内容をかんたんなレポートにして提出したことだ。私はその例として、『人間失格』の中の「私」の子供時代、また、『細雪』の悦子の偏食を取り上げた。

国文学生ならではのような鋭く興味深い視点での小話がたまに・・・✨

このように、珊瑚と美希喜のふたりが良きバランスで現代作品も、純文学も、古典文学も楽しませてくれます。

また、その他【ボンディのビーフカレー】や【揚子江菜館の上海式焼きそば】など、物語に登場する飲食店も、書籍同様に実在するお店が多数紹介されています☺

04|まとめ

 

「本の街」と言われる東京の神田神保町を舞台にした作品。この作品の面白いところは、『古本食堂』というタイトル通り、まさに古本と食べ物

作品に登場する古本や食べ物屋は全て実在しているので、小説を読むだけにとどまらず、『古本食堂』をきっかけ新たに読みたい本が見つかったり、同じ飲食店で珊瑚たちと同じものを食べてみることが出来たり、さらに一歩踏み込んで小説の世界観と現実をリンクさせて楽しむことが出来そうです☺

また、古本についてはもう一点。

物語の主軸であるふたりのキャラを活かして、バランスよくいろんな古書が登場するのも面白いところ。

古本屋としては素人だけど、無類の読書好きという珊瑚がお客にすすめる本はどれも万人受けしてきた評価の高い本というよりは、読む人ぞ読む、知る人ぞ知る、というようなマニアックな本ばかり。古典作品も純文学も、珊瑚の前で悩める客たちは求めていない。

珊瑚が紹介する本はどれも面白そうではあるけれど、『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズ(三上延 作)のように純文学をこれでもかと取り上げているような小説が楽しかったような読者には、すこし期待外れ・・・かと思いきや、ここが珊瑚に負けず劣らずの読書家であり、中古文学を専攻する国文科の院生 美希喜の出番

彼女が作中で読んでいる古典作品や、大学のレポートの話題として登場する純文学の目の付け所が、「国文学生ならでは」という鋭さ・マニアックさで面白さ満載です!

上記でも紹介したような【偏食の子ども】というものは戦前の作品には出てこないという話についてなどは、わたしも『人間失格』も『細雪』も読んだことがあるけれど、そんなところに特別目がとまったことはなく、目から鱗が落ちました😮こういうちょっとした「アッ!」となるようなエピソードが、古典好きや純文学好きも更に楽しませてくれます。

古本屋が、古典作品、純文学、そしてマニアックな本など、多岐にわたりありとあらゆる本に対応しているように、この『古本食堂』もまさにいろんな読者層を楽しませてくれる一冊でしょう。

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05|作者について

原田ひ香。1970年生まれ。2007年に『はじまらないティータイム』でデビュー。同作は第31回すばる文学賞を受賞している。作風としては、家族や食べ物をテーマにした、あたたかみのある作品が多い。また、代表作には『三千円の使い方』(2018/04)がある。同作は「お金」に焦点当てて4人の女性を描くヒューマンストーリーで、2023年1月期のテレビドラマとして映像化された。同作のほかにも、『財布は踊る』(2022)など、実用的な知識を得られるような作品も多くある。

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本日も読んでくださり、ありがとうございました!

あなたの読書がますます充実したものになりますように・・・✨

2024.03.29 anne

  1. 『極限の民族』・・・著者は本多勝一(ホンダカツイチ)。本著は本多が朝日新聞にて1963年から1965年にかけて1年ずつ連載していたるポタージュ3作品を、単行本にまとめ1967年に刊行したもの。 ↩︎

過去1000冊読了の本好き主婦です☺ いつもの日常を少し豊かにしてくれる! そんな本たちを紹介します。 \本で世界は広がる/ 好きな現代作家は瀬尾まいこさん!純文学なら谷崎潤一郎と織田作之助!

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